大きくする 標準 小さくする
  • トップ
  • 特集
  • VS近大附属高校「最後のワンプレーで大逆転!劇的な幕切れを演出したのは早稲田摂陵のエース・高木!」

VS近大附属高校「最後のワンプレーで大逆転!劇的な幕切れを演出したのは早稲田摂陵のエース・高木!」

2015/05/20

5月17日 VS近大附属高校 7・8位決定戦
 
こんな幕切れを誰が予想し、想像し、あのグランドにいたのだろうか。

時計の針は後半30分を示そうとしていた。互いの全力を尽くしたシーソーゲームは、ほぼ近大附属に軍配が上がったかと思われた・・・・・・
早稲田摂陵にはトライ後のキック差2点が重くのしかかり、誰もが諦めかけていた
中で、ただ一人だけ冷静にゲームを見つめ、虎視眈々と大逆転へのシナリオを描き、それまでに幾度となく相手に布石を打ち、仲間を鼓舞し、最後に自ら試合を決定付けた背番号10!

ラストワンプレーで起きたビックプレイにグランドは一瞬の静寂から歓声と悲鳴が渦巻き、赤黒戦士たちはトライを奪った清水の元に駆け寄り、次々にインゴールで抱き合った。
目を真っ赤にした男たちの光景は、このゲームの重要性だけでなく劇的な結末に心が揺さぶられたからであろう。
ラストワンプレーでこの勝利を演出した背番号10を背負った男は、トライ後に集まる仲間の光景を遠くから見つめ、グッと拳を天に突き上げ試合に出ることができなかった選手、リザーブ、保護者、OBの歓声に応えた。

早稲田摂陵ラグビー部の歴史に残る大逆転劇だった。



 
5月17日 舞台は花園第二グランド
 
関大北陽戦に敗戦してから、モチベーションが上がらず加えてテスト週間に入り、
練習する時間も限られるようになった。
そんな中で先週の敗戦をどのように選手だけで立て直し、リーダーシップを発揮する選手が現れるか。この試合には様々な意味合いがあった。
 
・ワセダとして負けられない
・秋の大会に向けての選手選考
・テスト後のチーム分け
・リーダーシップの発揮
 
1年生が入部してきた今、それぞれが自らのポジションを獲得するにはこの試合に勝つことが最大の評価である。
アップから主将・二ノ丸がチームを鼓舞し続ける。リーダーとしてマネジメントはまだまだだが、全員に熱を与え、鼓舞したことでいつも以上に3年生がチームに対して熱を与えた。花園のグランドで試合ができることはラガーマンとしての誇りであり、最後に「北風」を歌い準備は整った。


 
10時キックオフ
 
試合開始直後は緊張からかお互いボールが手につかず、ミスが多い試合になるが最初に流れをつかんだのは早稲田摂陵であった。
敵陣センタースクラムから展開したボールを連続で連取し川崎→平田がペネトレイトしたところを、オフロードパスで三宅につなぎ、ゴール中央右にトライ。7−0

 
しばらく中盤での攻防を互いに繰り返すが、今度はワセダが反則を犯し、ラインアウトから連続攻撃を仕掛けられ、最後は1対1を相手に振り切られ、ゴール右にトライを献上する。止めなければいけないシーンであったことは本人が一番分かっているだろうがそれまでに崩され厚みのないDFにしてしまったことが失点の理由。7−7




今度のチャンスはワセダに。相手が自陣でミスを犯し、そこで得たスクラムから連続攻撃。ゴール前まで行ったところでFWにこだわるのかBKに回すのかはっきりせず、中途半端にFW、BKの攻撃を繰り返して、結局は自滅しゴール前1mから戻される。明らかにマネジメント不足であった。このような競り合う試合ではスコアをして帰ってくる必要があることはリーグ戦から大いに学んでいたが、自発性と統一性のなさが露呈されたシーンであった。根拠のないプレーチョイスはチームを負の方向へ連れて行く。もちろんすべての選手がマネジメントをしなければいけないが、とりわけ9番は当たり前のようにラグビーを知り、必要なことをしなければいけなかった。
一度戻されたワセダだが、再びスコアできるエリアに近づいた。そこでも相変わらず中途半端な攻撃に終始するが、今度はFWがゴール前でこだわりゴール左中間に主将・二ノ丸がトライをする。14−7
このまま前半はスコアが動かず14−7とリードしてハーフタイムを迎える。
近大附属がうちの強みであるプレーを押さえ、弱点を突いてきているのは明らかだった。


 
後半開始
 
キックオフのボールを相手が蹴り返したところでカウンターATを仕掛け、そのボールを継続し、フェイズを重ねた後、飛び出したギャツプに高木が走り込み、裏で12番・平田にラストパス、ゴール右隅にトライ!理想的な展開で後半の先制点を奪いゲームを有利に進めていく!キックは外れ19−7 このキックが後々の重苦しい展開になる。
 
後半10分、ペナルティーをタッチに蹴り出し、ゴール前5mでラインアウトを得る。
今日の試合展開であれば、ここでスコアをすれば勝負は決まるはずだったが、相手にプレッシャーを受け続けたラインアウトで自ら難しいプレーチョイスで自滅し、そのボールを切り返され一気に95m繋がれトライを奪われる。19−14
それからも幾度となくゴール前ラインアウトを得るが、ことごとく相手にスティールされ、徐々に近大附属の流れに。
当たり前のことだが、ゲームには流れがあり、そのポイントを逃せば、相手に流れは渡る。



 
後半22分、蹴ったボールが近大附属のインゴールまで転がり、ドロップアウトで一瞬集中力が切れたところを相手が見逃さず、すぐにドロップキック。
​ワセダの多数の選手がボールから目を切り、ゆっくりしていた。

ここから一気に約70m切り返され、最後はDFが揃わない状態でボールを出され、ミッドフィールドを切り裂かれ、ゴール正面にトライされ逆転される。19−21

これはワセダとして、ラガーマンとして絶対にしてはいけないプレーであった。次からは修正しなければいけない。この大阪ではそのような隙を逃さないので勉強になるシーンだった。
 
そこからの時間は攻めても意図がなく、ただ継続しラックする展開。ゲームスピードが出ないのは誰かがボールを止めて自らマネジメントを考えていないので二手三手先の展開が見えない。
やっとのことで敵陣深くに入ったところでも反則を犯し、ボールを奪い返せない。
ラスト1分を切ったところで、自陣22mに攻め込まれ相手に継続され続けていた。ひたすらDFをするだけで誰かが前に出てチャレンジするわけでもなく、取り返すためのDF力がなく万事休す。それだけフィットネスが不足している状態でもあった。
そんな中で、コーチ陣は
「今日の試合で唯一この状況を変えることができるのは高木」
と口を揃えて話していた。



 
近大附属が攻め続ける中、裏に抜け出したところでチップキックを蹴ったことで、ボールがこぼれた。
普段から
「下のボールはワセダのボール」と言い続け、イーブンボールは体を張って取りに行く意識と練習をしていた成果が現れる。こぼれたボールにいち早く赤黒ジャージが飛び込みSO高木がセービングしてマイボールにする。
ラストチャンスを手に入れ、ターンオーバーから平田が前に出て、次のフェイズでSO・高木がDFのギャップを見つけ裏に抜け出す。この時間帯で走れる能力とセービングからの立ち上がり、そこまでに布石を打っていたことが最後の最後で功を奏した。
DFの包囲網を抜け出し、敵陣10mに達したところで相手FBとWTBに囲まれたところでビックプレイが飛び出す。
遅れてきた味方のサポートを感じ、あえて時間を稼ぎ左側にステップを切り、タックルに入られると同時にそのままバックフリップパス。そこに走り込んだのは13番・清水。
怪我に悩まされ満身創痍の状態で出場し、結果をグループリーグから出すことができなかった男は高木からパスが来ると信じ、足が止まった周りの仲間を追い抜いてサポート、その楕円球に乗せた全部員の思いを赤黒ジャージに確かに抱え込み、追いすがるDFを振り切り花園のインゴールに飛び込んだ!

この大会の最後の最後で大仕事!逆転トライ!順位決定戦は劇的な幕切れとなった!



防戦一方で自陣22mに貼り付けられ、誰もが諦めかけていた状況下で飛び出した高木のビックプレイ!
ラストチャンスでバックフリップパスで最後の最後で大逆転トライを演出し試合を決定付けた高木は、まさにこの試合のMVP。
二ノ丸ワセダを死の淵から生還させ、蘇らせた男はこの日自らの実力を確かに証明した!
先週の関大北陽戦の敗戦からわずか1週間。あの試合でトイメンの10番に決定的な仕事をされ、どん底まで落とされた男の意地とプライドであった。

 



 
この一戦は秋のシード決めには関係なかった。だが、この劇的な幕切れとラストプレーでも諦めず逆転したことは、この先の早稲田摂陵にとって大きな財産になったに違いない。追い込まれ、それでもなお諦めない姿勢はワセダラグビーの文化。
ワセダラグビーのDNAは確かに大阪にも根付いていると思えるような試合であった。
人生に残るような熱い瞬間とともに、二ノ丸ワセダは大きな大きな一歩踏み出した。
 
この大会では良い意味でも悪い意味でも自分たちを認識する機会が多かった二ノ丸組。身の丈にあったラグビーを展開し、一戦ごとに自分たちがすべきこと戦術理解度が高まった。
格上相手に対して自分たちの強みを生かす戦い、ゲームマネジメント、試合の流れを読みポイントを押さえることができた試合とそうでなかった試合。
数多くの接戦を経験することができた。
弱みも認識した。
ワセダとしての理想の戦いはある。ただし、それを実現するためにはまだまだ実力が足りず、すべきことが多い。人あっての方法、方法あっての人。理想と現実の狭間でジレンマがある中、二ノ丸ワセダはこれから先、新しいラグビースタイルを手に入れながら前に進まなければいけない。
自分たちの強みは弱みである。強みを押さえられれば今の二ノ丸組はどうすることもできなかったいくつかの試合。弱みに付け込まれ、試合を落とした。
弱みだと思い練習した選手たち。
試合では少しずつではあるが改善していた時もあった。弱みは強みに変えられる。まだ手がつけられていない部分であるから。
秋にはその部分が強みになる。強みに変えられるだけのトレーニングをして再びこの舞台に帰ってくる。お荷物だと思われている人たちが逆襲する半年。成長スピード、あらゆるスピードを上げて、再戦するまでに力を蓄えていこう。
OBの皆様、応援する会の皆様、保護者の皆様、いつも熱い応援ありがとうございます!
これからも二ノ丸組は一歩一歩進んでいきます。