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VS茨木高校 『全部員で手に入れた準決勝への切符!シード校・茨木高校を撃破』

2012/11/04

準々決勝

敵は茨木市の雄、茨木高校。文武両道で誰もが憧れる学校。前回の四条畷高校と肩を並べる大阪を代表する公立高校。この2年間、練習試合では勝てなかった。僕らにとっても憧れであり、摂陵時代から乗り来られなかった壁。だが、僕たちは生まれ変わった。
早稲田になり、赤黒ジャージを着て早稲田の文化と伝統を継承した。


(写真提供・北川さん)

平均体重95kgのFWで勝負。
これこそ下剋上へのストーリー!
下位のものが上位のものにうち勝ち,現状を否定して,本来の順序を逆転させることこそスポーツの醍醐味。
1週間想定したストーリーを完璧に彼らは実行した。

そう、僕らはやってのけた。これは波乱?Upset?ジャイアントキリング?順当?
誰がこのような結果になると予想しただろうか?
それもそのはずだ。春の大会では3敗。シード決定戦にすら進めなかった。だが、決して僕らが弱かったわけではない。練習試合ではシード校にも勝っていた。
スタッフは確信していた。必ず勝てると・・・・・

平均体重95kgのFWで相手に立ち向かう。全国の強豪と比べてもフィジカルは引けをとらない。ド素人軍団が努力して得た最大の武器。
『すべては勝つために』
勝つことにつながるなら徹底的にする。無駄な時間、難しいスキルは一切排除。
勉強との兼ね合いで1日、2時間弱しか練習できない。グランドを使える日は週4日。
早稲田への進学、勉強との両立の葛藤の中でバランスを取りながらここまで来た。
悩み苦しみ、心が折れそうな時もあった。だが、絶大なリーダーシップを発揮するこの男が42人の部員を導いてくれた。

『あいつならやってくれる』

どこからともなく聞こえる声。
負けているときも一人だけ向かっていったキャプテン・熊澤。この2年間キャプテンとしてチームを導くために悩み、一番先頭に立って戦い続けた男。自分にも厳しいからこそ、周りに厳しく言い続けた。

『すべては勝つために』

最高の『スキッパー』に共鳴するかごとく、副キャプテンの樋口、谷場が復帰し、この試合で3年生がすべて揃い、今季初のベストメンバーで試合をする準備ができた。

これまでの3試合で信じる一つの形が完成した。本当にそれで勝てるのか?この大会が始まるまでどこか疑いの心が拭えなかった。本当に信じていいのか?不安は払しょくされ自信に変わった。それと同時に『覚悟』と『決意』は固まった。試合のポイントはブレイクダウン。ブレイクダウンが弱いチームは勝てない。ラグビー=ブレイクダウンの方程式を証明するためにこだわった。


 (写真提供・北川さん)

 
 
11時10分 Kick off @同志社香里グランド
 
キックオフからエンジン全開。とにかくジャブ、ジャブ、ジャブ。相手がいても関係ない。ひたすら平均体重95kgの男たちがジャブを打つ。ここで引いたら相手の思うつぼ。相手のDFラインは内側に寄っているが、そこは外に展開せず、ひたすら内側の鍵を開けるために、ジャブを打ち続けた。攻撃こそ最大の防御と言わんばかりに、継続の嵐。相手も低く、速く、鋭いタックルで応戦するが、ジワジワとゲインを切っていった。

前半開始早々、相手ボールをタックルでターンオーバーすると、9フェイズ継続して最後は左隅に上原がトライを決め先制点をとる。4試合連続トライは秀逸。この大会で最も伸びている選手。ジャブからのストレートで理想的な形で点数を奪う。
 
2つ目のトライはラインアウトのこぼれ球から。
早稲田としてイーブンボールは譲れない。樋口が相手よりいち早く反応し、大外に展開。谷場が大きくゲインを切り、1分以上の継続で左右に揺さぶりながら、最後は右隅に橋がトライを決めた。

その直後、大型FWがラインアウトモールから数的有利を作りBKに展開し、最後は熊澤が相手を振り切り右中間へトライ。
 
後半への指示は
『ここからが一番大事なところ。少しFWが走れていない。しっかりセットしよう。相手はシード校。油断せず0-0に気持ちで先に点をとること!人生の残り30分。走ろう!』



後半も一方的な展開でボールを支配し続ける。ラインアウトからビックゲインを切ると、BKに展開して最後は平尾が左隅にトライ。

相手も必死に攻めてくるが、ブレイクダウンでの違いを見せてことごとく跳ね返す。
苦し紛れに蹴ったボールをカウンターATから左右に大きく展開。連続継続でゲインして最後は平尾が左隅にトライ。

最後は相手がミスパスしたところを橋が拾って独走トライ。

交代メンバーを全枠使い、選手を育てながらノーサイドの笛を聞いた。
パーフェクトなゲーム展開であった。一瞬たりとも隙を見せず最後までULTIMATE CRUSHし続けた。
前回の試合で油断から点数をとられたが、彼らは反省を生か【BIG BANG】を体現した。



 (写真提供・北川さん)

シード校に対して41-0・・・・この数字は大きな意味を持つ。そして何よりも1点たりとも与えなかったこと。隙を見せなかった。
不安、緊張、そしてその先にわずかに掴みかけた自信。勝てばラグビー部の歴史上初の花園予選・準決勝進出!
俺たちは勝てるのか?シード校・茨木高校の実力はどれほどなのか?
今週1週間、このような感情を抱きながら練習をしたことから解放された。

何が何でも茨木高校だけには負けられなかった。北摂でラグビーをするなら早稲田摂陵と見せつけたかった。早稲田になって僕らは変わった。素人でもラグビーはできる。そして大阪でも上位に食い込める。そのことを3年間で証明したかった。尊敬、憧れがあるからこそ最後まで手を抜かなかった。
勉強もラグビーもしながら早稲田大学、他の大学で活躍できる人材の育成こそ、早稲田摂陵最大のメリット。
早稲田大学と同じ文化、伝統を継承し、大学と同じ練習を学ぶからこそ人は育つ。『人は誇れるものが一つあればいい。それを究めて夢中になることで成長する』
今、彼らは間違いなく成長している。そして早稲田摂陵の学校の中でもっとも熱く生きている集団!
3年間言い続けてきた言葉がある。『夢を持つこと、目標を持つことが人間を大きくする。今を熱く生きよう』
彼らはその言葉を体現している。全員で掴んだ準決勝への道。王者・東海大仰星に早稲田ラグビーがどれだけ向かっていけるのか。
そこに必要なのは【狂気】。早稲田大学の寄せ書き毎回書かれている言葉『狂気』。
狂気を15人、43人が持てるのか。今、君たちに問われている。


(写真提供・北川さん)

 
(藤森コーチ)
ほぼパーフェクトなゲーム展開だったね。大きなミス、小さなミスもほとんどなかった。あそこまで完璧にゲームを支配するとは予想していなかったので素晴らしいの一言です。
この2年間、陽の当たらないところにいたけど、誰も諦めなかったし信じていた。勝つことの喜びと負けることのつらさを2年間味わい続けた彼らの成果が出たね。
ラグビーの『ラ』の字も知らない3年生ド素人軍団。最初はつらくてやめたい声も多数あったけど、続けてくれた。信じて続けてくれてありがとう。ラグビーを選んでくれてありがとう。お前らは俺の想像を超えて成長している。他の人から見たら、なぜこんなにも厳しく、つらく、痛いラグビーを続けるのかと思われるだろうが、試合を観戦したらわかってもらえたはず。ラグビーという魅力が君たちに関係する人に夢や希望を持たせていると思う。俺らが目指してきたもの、努力してきたこと、すべてを懸けて今を生きていること。こんなにも熱い仲間とラグビーができることを幸せに思う。
次の試合相手は強い。だけどおれが何か言わなくても考えていること、みんなに言いたいことがわかると思う。この1週間、最高の準備をして決戦に挑もう。
『狂気』という言葉の体現。求められる次への試合の精神状態。
偶然にも大学ラグビー部も筑波、帝京に負けて『狂気』を求めていた。これこそ、早稲田が求めている選手像。理屈ではない部分でどれだけ勝負できるか。