VS 県立伊丹 『A good beginning makes a good ending』
2012/06/25
	試合終了の笛を聞いてから反省するのは簡単だ。
	それはまるで、子供が先生に怒られてちゃんとするようなものだ。
	しかし、それでは勝利の女神は微笑まない。
	試合が始まれば自分たちで修正する能力が求められる。
	相手の特徴、レフリーの特徴、ゲームの流れを読むことが大切だ。
	今日は、新たにゲームのポイントを教えてもらった試合であった。
	『始まりと終わりが良ければすべて良し』
	言い換えれば、良い始まりが良い終わりを導く。
	この言葉は本当だ。
	最初と最後が締まらない音楽や小説を誰も聴かないだろうし、読もうともしない。
	興味はそがれ、内容がぼやけてしまう。
	
	久々の県立伊丹高校さん。
	彼らと対戦すると新たな発見と反省が見えてくる。簡単に言うと、現状のチームの強みと弱点を教えてくれる。
	また、対戦相手として、とても楽しみを感じるチームである。
	後ろから見ていると、意図するラグビーが見える、知性が見える、そして
	なによりも一生懸命さが伝わってくるチーム。
	戦術で対戦する楽しみがある、数少ないチーム。
	兵庫県で3位になれる実力は納得である。
	こちらが用意した戦術に対応してくる統率された動き、逆にこちらを考えさせる意図した攻撃、どのプレーをとってもやろうとするプレーに意味がある。
	彼らが奏でるハーモニーが目を閉じれば聞こえてくる。
	指揮者のリズムに合わせて、全員が意思統一された音色を発し、そこに耳障りな音はない。
	途中で楽譜を無視する者もいなければ、自己主張しすぎる者もいない。
	早稲田のエッセンスを加えたその戦術とマインドは、間違いなくラグビーの大事な部分を押さえているチーム。
	今日はテスト前の最後の試合。
	4、5、6月の総決算。
	内容もさることながら、強豪校に対して勝つゲームメイクを意識させてプレーさせた。
	前半から、積極的に攻めてくる伊丹高校さんとエリアを取りにいく早稲田摂陵のゲーム様相。
	毎度おなじみと言ってはなんだが、エリア合戦で最初にミスをするのはこちら側。
	蹴ってはダイレクト、そしてチェイスの不徹底によりカウンターを食らい自陣に張り付けられる。
	厳しい言い方だが、ラグビーを勉強していない、そして自分の仕事をおろそかにし、何回もゲインを切られていた。人を使い、そして周りを動かすのが両翼の仕事ではないのだろうか?良いWTBの条件はなんですかと聞かれたら、
	『DFをしないWTB』と答える
	自分がタックルする前にほかの選手をマネジメントし、タックルさせることができるWTBこそ本当の良いWTBなのである。
	翼がもぎ取られた鳥は飛べないように、早稲田摂陵は両翼のコーリング不足により低空飛行を続けた。
	3:7の割合でエリアを支配されていたのは、今日のBIG PROBLEM。
	加えてSO、FBのキックの向上は急務。
	厳しく両翼の話をしたが、問題はフロント5にあるのは誤摩化せない。
	誰かがチェイスしてくれるだろうというその姿勢は大問題。結果的に失点したのはフロント5の責任感の欠如。
	一方で、自陣にいても大崩れしなくなったのは成長の証。相手に攻めさせ、揃ったところで一気にターンオーバーした野口のタックルシーンは、今日のベストポイント。
	敵陣にいる時間は少なかったが、ターンオーバーからの2トライでゲームをリードし、前半残り1プレーを迎えた。
	ここで、相手にカウンターを食らい失点。やってはいけないトライ、防げるトライであったからこそ、なおさらである。
	公式戦でこのような時間帯に失点していては、確実に勝てない。
	後半もゲームのポイントを押さえていたが、ラスト1プレーでまたもや相手にトライを取られてしまう。これもまた、フロント5と両翼の責任感と自覚の欠如によるもの。挙げ句の果てには、動きがわかっていない者も・・・・
	失点するには理由があるということだ。
	試合には勝ったものの、これが公式戦であれば確実に負けていただろう。
	始まりから自陣に張り付けられ、終わりは最悪のストーリーだった。
	始まりと終わり、今日はこの言葉ですべての物語が完結する日。
	学んだことを次にすぐ出来るかがこのチームの課題。
	テスト週間に入り、どれだけ体重を上げれるかもチームの課題。
『NO EXCUSE』
	余談だが、試合後にある保護者が言っていた。
	『見ていると意図があって楽しい。2年前とは全然違うラグビーをやっている』
	
	やっと普通のラグビーができると手応えを感じる。
	スタンダードの構築、土台が固まった。安定したゲーム運びができる家は建った。
	そこからの間取りをどうするのか?家具は何を入れるのか?
	階段は?ロフトは?何階建てなのか?
	そこは夏からの成長で決まる。
	振り返れば1年目は改革元年。
	家を取り壊し、土台から整理し、どのような家を建てるのかを示し行動を開始した。結果は伴わなかったが、早稲田摂陵のスタイルを大枠で決めた年。
	2年目は台風のように大雨と暴風が襲い、建てる家のデザインが変更された。
	そこにある素材は流され、飛ばされ自ら離れていき、残ったいくつかの希望の光とともに終着駅を目指した。
雨ニモマケズ、風ニモマケズ、ホメラレモセズ、何回ウチマカサレテモ、ワセダラシサヲウシナワナイ、サウイフモノニワタシハナリタイ
こんな気持ちか定かではないが、残った誇り高き男たちの未来を明るいものにしたいと思った年。
	3年目、いよいよ勝負の年。ここまで来れたのは努力の賜物。
	努力は裏切らない。やった分だけ結果は伴う。でも、まだ君たちはなにも成し遂げていない。
	スポーツの世界は結果で示すもの。だからこそ自分たちの3年間を、2年間を、1年間を肯定する結果を手に入れたい。手に入れよう。
	君たちが2年間、陽の当たらない場所にいたことに今は意味がある。
	そして、これからは光を感じ取れる場所に出よう。
	君たちは強くなっている。いつも怒られているけど。
	自信と誇りがさらにチームを強くする。
	周りのチームに左右されない確固たるもの。早稲田としてのプライド。
	伝統と文化を継承し、赤黒ジャージに恥じぬ戦いが求められている。
	テスト明けの練習からいよいよ勝負の夏。
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