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VS常翔啓光学園 『目の前から逃げた大金星。赤黒軍団、ロイヤルブルーの前に屈する』

2013/04/18

春季大会 1戦目
VS啓光学園
赤黒VSロイヤルブルー初対戦

 
新人戦決勝進出でスタートした津志田組。しかし、これは大阪のトップ6を倒したものではない。我々の前にそびえ立つ高き壁、大阪トップ6。この6チームに勝たなければ我々の未来は開けない。選抜4強はすべて大阪という結果は我々に衝撃を与えた。
だが、我々は早稲田。大阪の勢力図を変える、大阪トップ6を破り歴史を変えるために戦わなければならない。
対戦相手は言わずと知れた全国大会4連覇。高校ラグビー界に啓光あり。
その実力と伝統は他校を寄せ付けない。ラグビー界の重鎮。身体が小さくてもラグビーの醍醐味であるタックルで観客を引き付け、魅了することのできる数少ないチーム。
 
試合前ミーティングで明日は歴史を変えようと話し、そのために必要なことを確認した。
とは言え、いくら我々の実力が上がってきたとしてもレギュラーの半分が素人軍団であのロイヤルブルーに太刀打ちできるとは誰も思っていなかった。
このような手に汗握る試合になるとは・・・・・
 
試合開始前、啓光伝統のタックル練習『ピンピン』を見て、こちらもいつもより距離とコンタクト強度を上げ、そして早稲田の部歌『北風』を歌い気持ちと覚悟を決めた。
 


12時20分 kick off

キックオフから10分間、反則を重ね自陣ゴール前に張り付けにされる。いつもなら格上相手に得点されるところだが、今日の早稲田はいつもと違った。東海大仰星に出稽古に行き、筑紫高校へ遠征に行って学んだ意識の持ち方、プレーの激しさ、基本スキルの大切さ、そして何よりもフィットネスの大切さを存分に発揮し、最後の一線を早稲田のプライドで死守する。DF能力が格段に上がったことを裏付けるように10分間の猛攻を凌ぐと、今度は早稲田がロイヤルブルーに襲い掛かり、ゴール前に張り付ける。スクラムで幾度となくプレッシャーをかけ続け、1.5mの世界を制圧するとゴール前1mまで何度も迫るが、そこはあのロイヤルブルー。青い波が赤黒を飲み込み、跳ね返す。ゴール前での激しさ、低さ、しつこさは秀逸。反則すれすれのきわどいプレーに素人軍団は対応できず、相手に何度もボールを奪われる。それでもセットプレーでプレッシャーをかけ、啓光が徐々にDFに回るシーンが多くなっていった。ラインアウトモール、スクラムで何度も何度も相手に向かって行くが、1m前にあるゴールラインははるか遠くにあるように感じ、最後はたまらず早稲田がミスをして前半終了の笛を聞いた。



 
ハーフタイム
この展開に生徒たちからは確かな手ごたえと自信が垣間見えた。これはまぐれではなく、間違いなく我々のレベルがあの啓光と同じ土俵で戦える準備ができていた証拠。遠くに見えた大阪トップ6の背中が、ぼんやりしか見えなかった背中が、間違いなく今、目の前にはっきりと見え、そして肩を並べ追い抜けるチャンスを手に入れた。試合前ミーティングで確認したプランをしっかりと遂行し、歴史を変えるための気持ちがグランドの外に伝わってきた。ここから先はさらに強い精神力と集中が求められた

 
後半、kick off

後半最初に先制したのは啓光学園。後半5分、エリア合戦から一瞬時が止まったかのように早稲田の選手がボールウォッチャーになる隙に、ロイヤルブルーが襲い掛かり一気にターンオーバーからトライをされる。痛すぎる先制点。キックも決まり0-7.
いつもならこのレベルでズルズルと得点を取られてしまうが、今日は集中力が切れない。その後の20分間相手陣地でラグビーをし続けて、何度も何度もゴール前5mに迫る。意地と意地とのぶつかり合い。しつこくFWサイドを攻め続け、相手の一瞬の隙を突いてキャプテン・津志田が左中間にトライする。
このトライに選手はもちろんのこと、観客も最高潮に盛り上がる。キックは外れ5-7。
このキックが後の結果に大きく響いたことは言うまでもない。




ラスト5分、まだ時間はある。敵陣に入ればワンチャンスで逆転できる点差。冷静にゲームを進め、プランを実行できれば大金星もあり得た。
だが、トライに浮かれ相手に背中を見せ、セットが不十分であったキックオフをキャッチしなかったことが勝負を分けた。マイボールにはなったものの、この日100%で獲得していたラインアウトで痛恨のノットストレート。この日の勝負が決まった瞬間だった。99本成功していたとしても最後の1本をミスしたら意味がない。
キックが入らなかったこと、直後のキックオフでキャッチしなかったこと、それがラインアウトのノットストレートに繋がったと言っても過言ではない。見せてはいけない油断、やってはいけない負の連鎖、この時間帯でもっとも大切な瞬間にチームの誰かから締める声はあったのだろうか?リーダーは、そして周りの選手はあのボールにどれだけ集中していたのだろうか?
このレベルで戦う上で、一瞬の油断、一個のミスは命取りを実感。そして60分間一瞬たりともボールから目を切らず、相手に背中を見せてはいけない。



そのラインアウトミスを啓光はスクラムを選択せず、ラインアウトを選択。ここにも試合巧者の姿。早稲田の素人軍団なら反対の立場ではスクラムをチョイスしていただろう。ラグビー経験の差、修羅場をくぐった数が最後には差に出た。
このラインアウトから押し込まれ、ショートサイドをあっさりと破られトライされ、万事休す。キックも決まり5-14.あれほどまでに低くプレーすることを徹底していたのにもかかわらず、相手に潜られ粘りなくトライをされたことは許しがたい。そして、ノーサイド。
確かに目の前にあった金星。掴みかけ自分たちから引き寄せることが可能であったその金星を自らのミスで自滅し、大阪トップ6の牙城を崩すことができなかった。

 
おしかった・・・・・後半25分まで5−7。
 
しかし、それでは意味がない。早稲田ラグビーは負けてはならない。4年目にして追いついた大阪トップ6の一角。敗戦後の選手の涙を見れば、勝てた試合だったことは明白。素人でも努力すれば見えてきた世界。
勝てる試合を落とした。勝たなければいけない試合だった。そう思えば思うほど悔しすぎる敗戦。
このレベルでは一つのミスが命取りになる。終盤の時間帯が勝負をわける。同じ土俵に立って初めて経験したことだろう。練習中の1本がどれだけ大切なのか。適当にやった練習の1本、練習でミスした1本、確かにこの試合でその緩さ、甘さが出た。
早稲田にはまだまだ早いよと言っているか如く、ロイヤルブルーは早稲田に勝利を与えず、勝負の世界の厳しさを突きつけた。
津志田組のターニングポイント。求められる意識改善。

 
 
藤森コーチ
まだまだ、僕らは甘いということです。本当に練習中のミスが出た試合、指摘されているミスが出た試合。練習中にミスをしている選手がミスをした試合。
試合の感想は率直に言うと、選手はプラン通りにほぼ実行していたと思う。スクラムはパーフェクト、そこからの展開は全然ダメ。エリアは△。DFは○。ショートサイドはAT,DF共に×みたいな感覚かな。ラグビーの経験値が足りず、いくつかプラン通りではないところの差が点数に表れていた。そこまで落とし込めなかったのは我々スタッフの責任。
東海大仰星、筑紫高校との合同練、試合を経験して急速にレベルは高まった。練習していることもだいぶ試合に出ていたので。一方でレギュラーと控えの差は大きい。経験者が少ない我々のチームはどうしても、層が薄く台所事情が苦しいよね。前半で中西が怪我をしたのはかなり痛かった。底上げをしていかないと。
選手はたぶん試合を通じてやれるという感覚を得た。自信と後悔を感じた試合だったのではないかな。試合終了後にどんな顔をして彼らは戻ってくるのかと見ていたけど、引退した時のような顔と涙だった。それぐらい本気でやって後悔して反省していたということ。
リーグ戦はあと2戦。啓光学園と公式戦で当たることができて良かったと秋には思いたい。この負けこそ津志田組のターニングポイント!
そして次は大阪桐蔭。日本一のチームにもう一度チャレンジできるのは成長できるチャンス。あの試合から点差を詰めなければならない。
本当に今日グランドですべきことをして帰ったのか?100%で練習をしたのか?自分に問いかけてほしい。誰よりも早くグランドに出て、誰よりもたくさん練習したのか?そう思える選手が何人いるかが早稲田を高みに連れて行ってくれると信じています。