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VS県立伊丹高校『忘れてはいけない歴史。今の社会に必要なNoblesse obligeの精神とは』

2012/11/28

新チーム始動。あの激戦からはや2週間。熊澤組から受け継いだ意志を背負ったスキッパーは津志田に決まった。早稲田のスキッパーの条件は一つ。試合に出続け、なおかつ一番身体を張れる選手であること。この条件に似合う男は津志田であった。熊澤もそうであったように、どんな状況でもチームを鼓舞し続け先頭に立たなければいけない。それが似合う男は彼以外に考えられなかった。2年連続ラグビー未経験者のスキッパー。
早稲田らしいと言えばそうなのかもしれない。早稲田大学は推薦組に負けない一般組が切磋琢磨することで強さを保っていて、早稲田の良さであると認識している。すべての選手に門は開かれており、努力すれば早稲田大学ではレギュラーになれる。
それは弟分の早稲田摂陵でも同じように継承されていかなければいけない文化である。




11月上旬、伊丹高校さんからご招待を受けた。この時期は試合をする予定ではなかったが、早稲田大学ラグビー部出身である奥克彦メモリアルカップということで、これは必ず参加しなければいけないと思い試合に臨んだ。
奥克彦さんをご存じでない方の為にホームページより引用させていただき、奥克彦さんのご紹介をさせていただきたい。
 
昭和33年兵庫県生まれ。早稲田大学を卒業後、昭和56年に外務省に入省。英国において研修し、イラン、米国での日本大使館勤務の他、国際経済第一課長、国連政策課長などを歴任した。平成15年4月に、在英国大使館参事官としての肩書きを有したまま、イラクに長期出張。イラクの復興に向け、取り組むこととなった。氏のイラク復興にかける強い使命感と情熱は、事件の直前まで書き続けていた『イラク便り』に如実に現れている。同年11月29日、イラクのティクリート付近で被弾し、逝去。大使に昇任。
氏はラグビーを深く愛していた。兵庫県立伊丹高校時代には全国大会出場を果たし、早稲田大学でもラグビー部に所属。留学先のオックスフォード大学では、日本人で初めてラグビー部の1軍選手となる。その後も日本ラグビー協会の役員となり、日本と世界のラグビー協会との橋渡しにも尽力した。
氏の愛したラグビーには「Noblesse oblige(ノーブレス・オブリージュ)」(責任ある立場に身を置いているからにはそれ相応の責務を果たさねばならない)、「one for all all for one」(一人は皆のために、皆は一人のために)という思想が貫かれている。イラク復興のために真っ先に現地に入った氏の行動はまさにラグビーによって培われたこれらの精神によるものと言える。
また、氏は人的ネットワーク構築にたいへん優れた人であった。氏の人脈の広さを示すエピソードは枚挙にいとまがない。イラクではたった数ヶ月の間に多くの友人を作り、イラク人はもちろん、英国人、米国人、オランダ人等、さまざまな国の人々から「一生涯の友」と慕われていたという。さらには、国会議員のラグビーチームの結成、国際試合の実現にも尽力していた。これも氏の人的ネットワークとラグビーを通した国際交流への熱い思いによって生まれたものと言えよう。
氏はまた、行動力に優れた人であった。“評論家であってはならない。現地を知ってこそ本当の外交ができる”という強い信念のもと、出張等で訪れた国は100ヶ国を超える。これは外交官としても異例の数だという。現地の意見を聞かず、机上の判断で評論ばかりする人には厳しい意見を述べていた。現地を知り、現地が何を求めており、それに対して自分は何ができるかを常に自らの頭で考えて、行動する人だった。
イラク復興に尽力する氏にとってその希望の糧となっていたのが、イラクの子どもたちの輝く目であった。イラク便りには「イラクの子供達のきらきらした目を見ていると、この国の将来はきっとうまく行く、と思えてきます。」とある。困難を充分に理解しながらも、イラクの子どもたちにかける希望をけっして捨てることはなかった。




奥克彦さんの無念は計り知れない。日本のため、世界のために危険な地域に飛び回り『Noblesse oblige』の精神のもと、走り回った偉大な先輩であった。このHPでも何度か使わせていただいた『Noblesse oblige』という言葉。早稲田摂陵のラガーマンにも学んでほしい。この言葉の本質を。かっこいい男とはどんな男なのだろうか?誰かの為に何かをすることがどれだけすごいことなのか。ラグビーというスポーツから学べる精神はどのようなことなのか?人としての持つべき熱。自分の為にすることと、誰かの為に何かをすることの意味を知ったとき、人は本当に成長するのであろうと思わせてくれる奥克彦さんの行動、そして言葉。このような偉大な方の存在を生徒に、そして早稲田摂陵にかかわるすべての方々に知ってほしいと思い、今回の試合に参加させていただいた。我々は奥克彦さんの存在をいつまでも忘れてはいけないのである。
私たちに出来ることはこの試合で全力を尽くすこと、そして礼儀を重んじること。練習試合では通常着用しない赤黒ジャージを着てこの試合に臨んだ。それは招待していただいたチームに礼儀を尽くすこと、奥克彦さんが卒業された偉大な高校である伊丹高校さんに対しての尊敬も込めてである。そういう意味では普通の招待試合ではなく、我々にとっては大きな試合であった。そのため、公式戦と同様のアップで試合に臨んだのだ。
伊丹高校さんと試合をするときは、毎回学ぶべきことがたくさんある。クリーンなラグビー、愚直で真っすぐなラグビー、観ていてワクワクする。同じようなラグビーを展開する両チームはどちらが先に心が折れるか、気持ちが折れて後ろを譲ってしまうかの戦いが毎回繰り広げられる。熊澤組の夏合宿ではAチームは負けてしまった。そのときにたくさんのヒントをいただいた。チームとしてのまとまりと徹底。これこそ伊丹高校さんの強さだと。兵庫県の県立高校で打倒私学として戦っている熱いチーム。偉大な先輩を輩出し、チームとしても尊敬できる。


 
試合は開始直後から激しい攻防になる。お互い逃げずに真っ向勝負。ブレイクダウンの多い試合。この試合でのマン・オブ・ザ・マッチはFL小仁。画面外から飛んでくるタックル、無尽蔵のスタミナでスイープ、キャリア、タックルを誰よりも早く。まるで早稲田大学のあの選手を彷彿とさせる選手。モラルリーダとして試合中もモラルのある行動。決して歩かない、一人で何人もの仕事をしてみせた。つい1ヶ月前までWTBとは思えない動きで完全に津志田組に欠かせない選手となったのは間違いない。
そして、この試合では赤黒デビュー戦の選手がたくさん。まずは3番東郷。まだまだ荒削りなスクラムではあったが十分可能性を示した。フィールドプレーでもタックル、キャリアとスタッフの予想を超える働きであった。そして、偉大なSO野口の後継者。1年生SO沖中。野口と同じにおい、ストーリーを歩に値する才能の持ち主。この日初めてのSOとは思えないゲームリードぶり。この時期の野口よりもマネージメント力は遥かに高かった。これからの努力次第では野口を超えることは十分にある。そしてCTB中村。Bombermanに値する活躍。こちらも予想を遥かに超える活躍に成長が楽しみな存在である。WTBの上戸も才能の片鱗を見せた。
津志田組の初戦は60-5という好スタートを切った。
 
試合後には伊丹高校さんの保護者の皆様に焼きそば、フランクフルト、ぜんざいなどたくさんのおもてなしを受けました。
伊丹高校の皆様、ありがとうございました。



藤森コーチ
今日はとても意義のある試合であった。上にも書いてあるように早稲田出身の偉大な先輩から多くのことを再認識させていただいた日であった。早稲田だからこそNoblesse obligeの精神を持っていなければいけないし、チームとしてもこのような精神を育めるような指導を心掛けていかなければいけないと再認識させていただいた。
新チームの初試合にしては良かったね。少なくとも去年の新人戦の時よりもチームのスタンダードレベルは上がっている。1年生も半年間で成長しているのが確認できたし、初赤黒でしっかりと責任を果たしていた。熊澤組の3年生を見ていれば人は育つよね。どうすれば早稲田として正しいのかがチームに浸透してきた感触はある。
でも、まだまだ何かを成し遂げたわけではないし、目標を達成したわけではない。与えられている課題を彼らがしっかりと達成できるかでこれからの成長は決まってくると思う。達成してこないということは勝ちたくないという姿勢だし、早稲田を背負っている者として考えが甘すぎる。これからテストだが文武両道で提示された数値を達成しなければいけない。