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特集 平田瑞貴 「帰還」

2021/03/30


グラウンドにリアルリーダーが帰ってきた。

早稲田摂陵高校ラグビー部には語り継がれる幾多の物語がある。
その中でも特に語り継がれている伝説の代。HEROたちの物語。
それは素人軍団が大阪府花園予選決勝に進出した話。
春季大会Bシード決定戦、残り1プレーでゴール前に迫りながら1m届かず敗北した関大北陽高校と再び花園予選で対戦すると、今度は残り1分でPGを決めて勝ち越し。このストーリーと劇的な勝利に選手、スタッフ、観客全てが感動の涙を流した伝説の代。

迎えた決勝戦。高校ラガーマンの聖地・花園。
花園第一グラウンドに集まった1万人近い大観衆の中で歌った北風、赤黒ジャージを着た漢たちの生き様とワセダらしさ。サインプレーからゴール真下にトライしたその瞬間の光景と歓声。その光景を見つめた全ての人たちにワセダの3文字は刻まれていたはずだ。



それから4年。
早稲田摂陵のカルチャーは失われつつある。時代は変わりアップデートが求められる中で変わるものと変わらないものの見極め。先人たちが築き、伝えてきた重要事項。
緊張、継承、創造

ワセダラグビーとは

このシンプルな問いに3年間真剣に向き合う姿勢や態度が必要だ。
あの決勝戦での教訓の一つ
勝利を絶対としない努力は、心震えるような人生を与えてはくれない。
ワセダラグビーが、いつの世も観る者を魅了し続けてきた理由。諦めない、努力し続ける、愚直。
そこにいる仲間と指導者と誇りを持って戦うこと。


現在、選手18人。決勝に行ったチームの現状は厳しい。
10数年前、合同チームを回避しバトンを繋いだ真島組とほぼ変わらない現状。
一度崩れ始めると立て直すのは困難。築くのには時間がかかるが、崩壊するのはすぐだ。

そんなとき、「鳴らない電話」に一本の着信が。

我々はこの瞬間を待ち焦がれていた。早稲田摂陵高校ラグビー部史上、最高の背番号12で主将。
「I will be back」と宣言してから4年の歳月が経過。
決勝進出チームの中心で導いていた漢の帰還。
それは早稲田摂陵高校ラグビー部に携わる全ての人の願いでもあった。

「君の名は?」

平田瑞貴。

まさに「君の名は希望」

まるで赤い糸で結ばれ、前前前世と全ての出来事が紡がれ戻ってきた。
誰からも愛され、プレーも人格も抜群の男が教員として戻ってきたのである。

ここから再び早稲田摂陵は分岐点に差し掛かる。目の前にある道は下り坂か上り坂かはたまた摂陵坂か。

最後の切り札である元主将の帰還にチームは再び息を吹き返す条件は揃った。
あとは選手次第だ。

全集中で聞いてくれ。
冒険への誘いが来ている。
これはみんなにとってcalling(天命)なんだ。
冒険にでるとき指揮官とともに歩む勇気と覚悟がいる。彼はみんなのメンターでもある。
ドラゴンボールでいうところの亀仙人だ。彼は決勝までいく過程を知っている。
それに必要な仲間の集め方やレベルアップの仕方、必要な試練も。
そしてその冒険の最後に得る宝物も。
あとはみんな次第だ。

だからこそ、みんなに伝える。
君たちはワセダなんだ。赤黒ジャージとワセダの名前を聞いた人たちはみんな試合に注目する。
ワセダの名を背負う者たちの宿命。

変わるのか、変わらないのか。目の前にあるチャンスに行動しなければ現状は変わらない。誰かが変えてくれるのではない。変わるのは自分自身が望まなければ。

最後に現役、OB.OGたちにこの言葉を送る。
“If you want to go fast, go alone.  If you want to go far, go together.”