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準決勝 VS興國高校「苦しみ、もがき、あがき続けた1年10ヶ月の結果」

2016/02/03

準決勝
VS興國高校

我々は決勝戦へのチケットを手にいれた。苦しみ、もがき、あがき続けた1年10ヶ月。努力しその先に得た未来は、自分たちが入学当時に描いたストーリーだった。良い選手は自分のストーリーを描ける。良いチームは自分たちのストーリーを描き、現実のものにする。目標の高低差がチームの終着駅を示す。
1年生の4月。ラグビーボールを前に投げ走り出す彼らの姿は、今は少し頼もしく、そして少しワクワク感を感じさせる。未だに大ノッコンはあるけれど・・・・・・・
そんな右も左も分からないラグビー素人の彼らにもできることは【努力】。努力できることが彼らの才能。どんなに苦しくても厳しくても歯を食いしばり、ワセダの誇りと伝統を絶やさないように戦い続けてきた。それは今までもこれからも変わらない継承されるべきDNA。先輩たちの姿勢と行動と発言を信じ、現実で起こる歓喜と残酷さの数々を目の当たりにし、
負けることへの恐怖と勝利の歓喜が押し寄せる緊張感を体感し、仲間と目指し熱くなる時間は、一言では語れない世界観である。その世界観が人を大きくし、人としての基となる。
何度も努力という言葉を忘れ、目指すべき目標の高さに心が折れた時期もある。だが、現実に起こっていることが答えだ。決勝進出が1年10ヶ月の平田組の答え。


【努力は裏切らない】

歴代の先輩たちよりも少し努力した平田組。間違いない。
先輩たちが俺たちの努力ぐらいでは勝てなかったと基準を示した。これも間違いない。
1年から描いたストーリーを実行してきた。これは自分を信じ、仲間を信じたから。そして、人としてのプライドがあったからだろう。自分にプライドがあれば努力するしかない。








1月31日
この日、平田組はあの最強と呼ばれた津志田組に肩を並べ、そして今までの先輩方の情熱と無念と覚悟を確かに背中に背負い、戦い続けた60分間を演じた。
1分1秒、1プレ-1プレー、その延長に60分間の結果が出ることを理解して。

試合ではその想いを背負って戦ったが、どこかで心の隙があった1週間。それは前日に現れた。
試合前練習が予定通り始まらなかった。そんな違和感に気付いたリーダーはいなかった。なんとなくが積み重なった結果。誰も指示せず、考えもせず、起こした行動。きっと誰かがやると思ったのだろう。今はそんなチームだ。
このゲームの重要性は理解していた。だけど、実行や感覚は研ぎ澄まされていなかった。ゲームに対する万全の準備を怠っている。
隙があると感じた。どこかでなんとかなるだろうと。その緩い空気感を感じ、締めることができるのかを見守った。だが、それはできなかった。これも現実である。ゲームに対する準備、真摯な態度、厳しさ、目配り、気配りができない。これが全国大会に出るチームとの差だと覚えておかなければいけない。
慢心は敵だ。



試合では赤黒がタックルし続ける。そんな期待を胸にOBや関係者はキックオフの笛を聞いただろうが、予想とは裏腹にコーチ陣の不安は的中した。むしろ、不安というより正しいことが当たり前のように起こったのだからコーチ陣は納得し、反省した。
開始1分で先制トライを許した。当日のアップ【前】の顔を見れば起きることは起きた。厳しさではなく、笑顔があった。負けたら終わりという悲壮感ではなかった。物事を楽観的に捉えている。会場に一度入れば、それはゲームが始まったと同じ意味だ。いや、ノーサイドの笛を聞いた瞬間から、次のゲームが始まったと同じだ。そこからすでに試合は始まっているのである。国と国が戦う試合にそんな笑顔を見せる選手はいるか?
なんとかなるさはなんともならない。胸に刻むことが一つ増えた日だった。

話を戻すと、先制点を奪われ追いかける立場になったことでリズムを掴むことがなかなか難しかった。
興國高校は試合前アップでピンピンをやっていた(早稲田大学でもやるタックル練習)
興國高校にもワセダの血が流れているのは、早田組の石田コーチが指導しているからである。
攻めても良いタックルが飛んできて流れを分断される。指導が行き届いたタックルは最後の一線を簡単には割らせてくれなかった。
そんな状況下で打破したのはFW。ゴール前でしつこくプレーし前半を17-7で折り返す。



後半もお互い近場の攻防でゲームが進行する。ゲームスピードを上げる必要があるのだが、お互いがそこにこだわる。
今日の試合は、そこが勝負所。そこから引いては勝てないと踏んだ選手の判断。痛いプレーの連続だが、それでも苦悶の表情を見せる選手はいない。フィールドに立ち、この仲間と戦うことがワセダラガーマンにとって名誉なことであるから。ピッチに立って自らを表現できるのは15人だけであり、仲間を代表した自分が弱さをグランドに表現するのだけは、許されない。


前半から厳しい戦いだった。伝統校である興國高校の洗練されたフィジカルアタックがジワジワとボディーブローのように襲ってくるが、そこは譲らなかった。ブレイクダウンで「ULTIMATE CRUSH」こそが今季の早稲田摂陵のテーマである。受けるのではなく、追い詰め恐怖を与える。経験値不足による仕留め不足で、自らの首をしめるゲーム様相にも粘って接戦に。
そこの中心にいるのは主将・平田。チームがピンチの時に身体を張
り続けてチームを鼓舞する。
相手のシャローDFに苦しめられるが、リーダー陣が話し合い、うまく解決した。
後半もジワジワと得点を重ね、最終的スコアは38-12

ノーサイドの笛を聞いたと同時に安堵よりも恐怖が襲ってきた。対戦相手は先日の全国大会で優勝した東海大仰星高校に決定したのだから。それでもこの時期に試合ができ、胸を借りることができるのは大きい。全国一を肌で感じ、自分たちに足りないものを教えてもらえる。そんな試合をどのように挑むのか。
入学してから1年10ヶ月。時は戻らない。この期間をどんな風に過ごしてきたかが結果である。
今年のチームスローガンが試される。