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特集 平田瑞貴「Championship mind」

2016/03/14

 2年前の冬。
公園で平田を誘った時から、彼が主将になることは決まっていたのだろう。
この2年間、周りの仲間を鼓舞し、経験者として先頭に立ち続けてきた。
全国屈指の名門校の誘いを断り、選んだ先は早稲田摂陵高校だった。
 1年生同士の初めての試合、素人が何人も出場する早稲田摂陵と全員経験者チームとの対戦で、一人で6トライを量産しチームを勝利に導いた。どんなに苦しくても試合中に声を絶やさず仲間を励まし、先頭に立っている姿を仲間は鮮明に覚えている。自分を犠牲にし、どんなに困難な状況でも前を向き続ける平田は、早稲田摂陵ラグビーを体現してきた。

「稀代のスキッパー」

早稲田大学でも数名しか持ち合わせないリーダーとしての素質と実力を持ち合わせ、プレーはもちろん、人間性も抜群。誰からも愛されるそのキャラクターはラグビ−部だけにとどまらず、クラスでも彼の周りにはたくさんの友達の輪ができる。

「観ている人に熱いものが伝わるプレーと姿勢をグランドで示します。この2年間、悔しい気持ちを味わってきました。僕たちの代で《荒ぶる》歌います。僕らは追いかける立場です。365日の1日も無駄にはできません。先頭に立って全部員を連れて行きます。」

168cm、88kgのスキッパーがチームを鼓舞するとき、一つの魂が早稲田摂陵に宿る。




主将になるのはどのように伝えられましたか
先生から個人的に連絡がきました。

そのときの気持ちは
1年生でこの部活に入ってからキャプテンになりたいと思っていたので、正直嬉しかった。

任命されると思っていたか
高木も主将としての能力があるのでどうかなと思いましたが、任命される気ではいました。

副キャプテン二人をどう思う
ずっとやってきた二人ですが、プレー面でも私生活でも信頼できる二人が選ばれたと思っています。

今年のスローガンChampionship mind について
チームに足りないところはまさにそれなので、ぴったり当てはまっていることだと思いました。フィジカル面は追いついてきているけど、その土俵に立つ経験値や考え方ができていないので。



今でも記憶に残っている1年生だけのファーストゲーム。どんな試合でどんか気持ちだったか
あのときは1年生ながらにみんな気合があって、全員経験者の相手チームに勝ち手応えのあるゲームだったので、周りの同期とやっていけば良いところまでいけるかなと思いました。

これまでの自身の2年間を振り返ってください

素人が多い部活の中、周りを引っ張らなければいけない環境であったので、ほかの学校よりもいろいろと考えなければいけない2年間であった。自分自身のことだけでなく周りのことを良く考えていました。

周りの同期をどうみてる

仲はすごく良い。その分、表面上でいいやつが多いかなと。本心から周りのことを考えているのかはまだわからない。そうゆうところを埋めていく365日だと思います。

ラグビーの面はどうみてる?

小学校、中学校とやってきましたが真剣に取り組んでいる人が多い。その面では信頼できる人が多いです。

名門校を断り、早稲田摂陵に入ってきて周りを見渡せば素人ばかり。決勝進出というイメージはあったのでしょうか
全国大会に行きたいとは思っていましたが、具体的にはここまでこれるとは思っていませんでした。

なぜ、ここまでこれたのでしょう?

他のラグビー部、強い強豪と部員数は異なりますが、練習やコーチ陣は他の高校に劣っていないです。それにみんなが主役になるのでみんな努力します。

練習はどうですか?

勝つための練習をしています。勝つことを追い求めれば追い求めるほどきついことをしていかなければならない。



今年はどのようなチームを目指しますか?
上級生が下級生から頼り甲斐があり、単純な上下関係でなく後輩から信頼されるようなチームです。

昨年の花園予選。大阪桐蔭に敗退。差はなんだったのでしょうか?

物理的な面ではウエイト、身体の質の差がすごく大きかった。だけど、同じ時間ぐらい時間をかけてウエイトをしている。ここがマインドの違いで、全国で優勝するチームと全国大会に出たいチームでは意識、行動、質が違う。
メンタルの面でも桐蔭は当たり前のように花園にでるチームでそこの差が大きく出ていた。

試合での感触は

あれだけ初心者が多い中で、大阪のトップチームにも追いついている部分はけっこうあったので、自分たちの代でなんとかしたい。

あの負けた日、先輩からどのような言葉を受け取りましたか?

正直言うとあまり試合後のことは覚えていませんが、試合が終わって落ち着いてから、3年生からキャプテンになるのは平田になる可能性が高いから、がんばれというのは一番覚えている

二ノ丸組の3年生をみてどのように思いましたか?

3年生の中でどのような関係かはわかりませんが、2年生から見てまとまりはなかったかもしれない。だけど、桐蔭戦が決まってから違う方向を向いていた人たちが自分たちから引っ張っていくのがあったので、やるときはやるという感じで尊敬していました。



11月のFirst meeting どう心に残りましたか?
1、2年でやってきたことの延長線上が最上級生であり、ファーストミーティングでは新しいことよりも今までのことをしっかりとやらなければいけないと気が引き締まった。

そのあと、サニックスワールドユース予選会に出場が決まりました。そのときの気持ちは?

目標としていた大会に出れるということなので、嬉しい気持ちでした。自分たちの力を全国レベルの大会で試すことができる機会をもらえて光栄でした。

サニックスの対戦相手は札幌山の手高校。どうでしたか?

小学校から全国大会をテレビで見ていて、ラグビーをやっていれば誰もが知っている学校なので、そのようなチームと対戦できることは誇りに思いました。

実際にどうでしたか?振り返ってください

相手の方がビックマッチ、試合慣れしているところが差で出た試合でした。敗因の一つに挙げられると思います。
内容的には、僕の感覚では試合した感じがなくてサニックス前にやってきたことが出せなかった。自分たちの土俵でラグビーをさせてくれないのが全国レベルであり、その中で自分たちが我慢しなければいけなかったし、その能力や戦術、経験がまだまだ足りなかった。

続いて、大阪産業大学附属との大阪対決。どのような心境で対戦を迎えたか

大阪同士の試合、初戦の札幌山の手より意味合いが大きかったです。大阪に帰ってからに影響がありますので。
心境としては緊張の部分が大きかったですけど、どうしても勝たないといけなかった。代が変わってから一番大きい意味がある試合だと思っていました。

実際に戦ってみてどう感じた

1年生の最初に産大と対戦してずっとそこからは対戦していなかったのですが、前評判的には産大は出来上がっていて良いチームだと聞いていました。試合をやってみて追いつける部分はあったと思いましたが、そこには確かな差がありました。それが昨年決勝戦に出ているチームの経験であり、プライドだと思います。

何が差として出たのか?

アップや立ち振る舞いですかね。部員全員がラグビーのこと、チームのことを考えて行動していて、その部分はそのときの我々にはなくて試合のプレー1つ1つに出ていた。

2回連続で負けたときの主将としての心境は?

結果も出ない、点数差がついたので痛い2敗でした。とりあえずやばいなと思いました。



その次も近畿大学附属との大阪対決に決まりました。どうでしたか?

近大附属とは練習試合、公式戦含めて毎回拮抗した試合だったので敵としては大阪同士だしちょっと嫌な雰囲気はあった。その部分では不安もあったけど大阪での実力を示すには大切な対戦で、内容も含めて勝たなければいけないと思っていました。

初めてサニックスでの勝利を掴んだ心境は

大きい大会で1勝を挙げれたのは単純に嬉しかったですし、やりたいことが半分は出来た勝利だったので一安心でした。なんとか踏みとどまれたかなと思いました。

歴史的な1勝ですが、それについては

サニックスに出れたこと自体は先輩方が残してくれた結果だと思っていたので、歴史的といえば歴史的ですが、まだ自分たちの力でやりきったわけではなく先輩たちの力です。自分たちの代での歴史的とは捉えてはいなかった。

周りの仲間の様子はどうでしたか?

歴史的な1勝がわかっているかどうかはわからないけど、大会に出て2敗続いた中で1勝できたので、みんな安心したというかもぎ取れてチームの雰囲気は良くなった。

最後に対戦したのが東京都の目黒学院。やる前のイメージは

目黒はビックネームで花園にも出ている高校なので、そうゆう相手と戦えるのは新チームにとってすごい良い経験、機会だと思いました。

実際に対戦してみて

向こうは自分たちのやりたいラグビーできているようには思えなかったんですけど、それでもタイトなゲームになったのはやはり全国大会に出ているチーム。我々も練習でやってきたことが出せていなかったので、そうゆう意味で我々も甘かったんですがなんとか勝つことができました。

甘かったけど、勝利を収めた。その要因、理由は?

たぶん向こうのチームよりこの試合に対する重要さは僕らの方が上だったと思うので、そのメンタルの部分がプレーで少し上回ったかなと。

実際にサニックス大会に参加して学んだこと。

どのチームも全国に出たことあるようなチームばかりで、今まで私生活の部分やチームの雰囲気とかは言われ続けてきて、それを実際に体感することや経験が少なかったんですけど、大会に参加してどのチームも雰囲気や立ち振る舞いを強いチームほどしっかりしていたことを早い段階で学べたので、そうゆう部分ひとつ切り取っても、この大会に参加できた意味は大きかった。

結果が出なかった。そこにはどんな差があったのか

先輩がいるときからの積み重ね、新チームになってからできるわけではないので、1、2年生のときから質の高いことをやっているチームが多かったと。そうゆう部分で結果が出なかったことは必然だと思います。



サニックスから帰ってきて周りの雰囲気は変わりましたか
行く前より練習中のコールを出すのが多くなった。上級生は少しずつ変わった。全国レベルを体感して。

特に誰でしょうか

リーダー陣の中でいうと、大介は参加する前よりは倍くらいチームの雰囲気を上げるコールはしている。コールじゃない部分だと田崎はチームがしんどいときに引張ることができている人間だと思う。サニックスに行く前より見せてくれている

大会が始まりましたが、帰って来てからの3週間、どのようなことに力を入れたのでしょうか

プレー面では走れていないという課題が明確になったので、そこはチームのみんながわかっているので力を入れています。

初戦の上宮太子戦、平田組にとっては大阪での公式戦初戦。どのような気持ちでチームをまとめていったのでしょうか?

初戦の大事さ、初戦でどれだけ崩れてしまうかを伝えることを1週間前から心がけていた。それをアップ直前まで言っていたのですが、アップに入ってもわかっていない仲間がいたのでアップ中も初戦の大事さを伝えるようにしました。

実際に戦ってみて出てきた反省、良かった点は

全員が緊張してやりたいプレーはできない環境の中で自分が状況を打破するという選手が少ないというのは悪い部分です。良かった点はそういった状況の中でも勝つことができたのと、相手を0に抑えたことは初戦としては合格だったと思います。

興國戦について

去年のチームを結果で越えるために勝たなければいけない試合でした。いつもとは違った緊張が試合前からありました。試合開始直後に、自分たちのミスで先制点を許したときは、考えなくても去年の朝高戦のことを思い出しましたが、なんとか勝つことができ、このチームにも大事な試合に勝つ地力のようなものが付いてきている風に感じました。


東海大仰星戦について
まず相手がどこであれ、決勝という舞台は誰も経験したことのないものだったので、全員にいつもの何倍もプレッシャーがあったと思います。僕は怪我で練習に出ることができませんでしたが、それは感じていました。試合が始まってファーストプレーで、引き締まったゲームができると感じました。
ゲームを通じてコンタクト面、スクラムなどでは大きな差はないと感じましたし、フェイズを重ねることもできトライも取れました。それでも30点差をつけられたのは、まずどれだけ大きい試合に慣れているか、ここは敗因の一つだと思います。自分たちはいざという時、焦って正しい判断ができなかったりいつも通りのプレーができないことが多々ありましたが、仰星は落ち着いた正しい判断で、効率よく攻め、守り、効率よく得点を重ねていたと思います。その他にも多くの面でちょっとずつ上回られ、30点の差がついたと思います。

決勝戦を終えて
仰星戦良い試合だった、このように言われることがありますが、負けてしまっては元も子もないと思っています。ですが、仰星戦の後チームの中にはゆるい雰囲気が流れています。僕たちには後が無くなりました。この状況を正しく理解している選手が少ないので、チームに伝え、鼓舞していくことがこれから僕がすべきことだと思います。


 



 
話は変わりますが、早稲田ラグビーを学んで2年間。どのようなことを感じていますか?
ワセダラグビーという伝統の重さ。文化の違い。ラグビーの創造ですかね。

ワセダの伝統、文化とはなんですか?

それは説明できないですけど、勝つことを究極的に追い求めていく中に生まれる練習や態度や発言。儀式ですかね。

ワセダラグビーとは?

熱くて、激しくて、それでいて賢い、クレバーなラグビー。

ワセダラグビーに伝わる言葉で印象に残っていること

鉄笛を読んで一番残っていることは、ULTIMATE CRUSHです。英語なんですけど。鉄笛を読ませてもらってワセダの熱さの一部を感じ取れます。

赤黒ジャージについて

小さいときからワセダといえば赤黒ジャージと知っていたので、試合で赤黒を着る度に感慨深いものがある。

北風は

それは知らなかったんですが、平尾組の春の大会で初めて聴いたときは鳥肌が立ったしかっこよかった。

キャプテンソロもあるよね?うまく歌えますか

まあ、一応1年から公式戦の度に歌ってきているので多分大丈夫です

荒ぶるは知っている

高校に入るまでは知りませんでした。先輩たちからも聴いたことがない。
歌えるように頑張ります。

トップ6との差はどこにある

フィジカルとプレーのスキルはやるかやらないかの問題であってないようなものですが、マインドが違う。花園に僕らは出たことがないので現実的に見れているかどうかがトップ6との差。



どのようなスタイルで今年勝つ。

フィジカル面が差が一番詰めやすいところなので、それ以上に鍛えてその部分で上回り、他の部分の優位性を作りたい。

同期もけっこう大きいよね?

たまたま身体に恵まれた素人が多くて、

今までの平田にとってのベストメモリー

1年生のときの平尾組の天王寺戦、コンバージョンんが最初に入ったときは鳥肌が立ちました。

同期のマネージャーについて

基本的に明るい二人なので選手からもなんでも話せますし、二人からも選手に話せることが多いです、二人とも怒ったらなかなか怖いです(笑)

大学はどう考えている?

ラグビーはしたいのでラグビーをすることをメインに考えたとき、ワセダでラグビーもしたいですし、関関同立でもしたいです。文武両道できるようにがんばります。

応援する人へのメッセージ
ワセダとして成し遂げなければいけないことがあります。その道は険しく、幾多の困難を乗り越えなければいけません。苦しい状況のとき、いつも応援してくださる皆様から勇気をもらいます。これからもワセダラガーマンとして、ワセダラグビーの伝統と文化を守り、観ている人が熱くなるようなプレーをグランドで表現していきますので、応援よろしくお願いします。